寒さに溶ける

外に出て、ダウンコートのポケットに手を突っ込んで首をすぼめて、寒いなあと思った。
この時期に吹き付ける風は、どうやら体をえぐっていったようだ。胃の下あたりを冷たい風が吹き抜けていくと体が一回り縮むような気がする。ぽっかりと空いた穴に、また冷たい冷たい風が差し込んで穴を広げて、人間などひとたまりもない。

寒い寒いと二人ではしゃぐ女子高生は、寒そうな格好なのにあたたかそうで、何も言わずに俯いてスマホをタップし続けるサラリーマンはあたたかそうな格好なのに寒そうだ。駅のホームにはそんなあべこべな人たちがそろって電車を待つ。遠くの方から踏切の音がすると、みなそわそわと線路の向こう側を見つめて足踏みをするのだ。

大きな穴を抱えた人間が鉄の箱を待ち、コンクリートの上に殺傷能力の高い風が吹き付ける。やがてこのツキリと鋭く冷たい風が、ゆっくりゆっくり体に空いた穴を大きくしていくだろう。