短い日記

金曜日の夜、街を歩く人々の足元はどこかふわふわとしている。なぜか今日は闇の中、自己主張の激しいライトがあちこちで点滅して人々を呑み込んでいく。行く宛もなくゆっくり歩く街並みは、着飾った田舎娘が慣れないダンスを踊っているようで、今夜ばかりは拙い踊りに拍手が湧く。

上から2つボタンを外した男性が方を組んで笑い、腕を絡ませて目を細めた男女が何事かを話しながら風景に溶け込んでいった。蒸し暑いこの季節でも、陽が落ちて風が吹けば少しは過ごしやすいものだ。けたたましいクラクションの音もあまり気にならない。

みんな誰も彼も、週末には楽しい予定があるのだろうか。そんなことはない。おそらくそうではない。

愛想笑いで重たそうなバッグを手に、上司か同僚か、数人のスーツの男性とカラオケに入っていく女性。つまらなそうに騒ぐ集団の後ろを付いていくだけの男性。道路脇で乳母車のそばに立ち竦む老婆。

世界中の人が幸せになることはなく、望む未来に望む結末は訪れない。ただ、目の前に広がる景色が美しいと感じた瞬間があったという、その事実だけがいつまでも落ちているのだ。